人との関わりについて悩んでいる。
そんなとき、「何か対人関係において苦手なところがあるのかもしれない」という風に考える方が多いと思うんです。
カウンセリングの中でも、
「私は人の気持ちがわからないんです」
「相手とコミュニケーションをとることが苦手なんです」
「人と会うとどっと疲れてしまうんです」
なんていうご相談をいただくことがあります。
ただ、そういった方のお話しを聞いていると、
本当に気遣いができる方だったり、自分の気持ちをしっかり伝えてくださったり、お話しするのを楽しみにしてくださっていたり。
人との関わりにおいて苦手なポイントがあるなんて、思えなかったりするんです。
むしろ、うますぎる。
つまりお悩みは、「人と関わることが得意すぎるゆえの苦しさがある」というところなのではないのかなと思うんですよね。
これ、なかなか周りからわかってもらえず、ひとり孤独感を抱えたり、自分の至らなさを探すしかない状態になり、結構しんどい状態になっても不思議ではないなと思うんです。
そこで今回は、「客観的にみると人とうまく関われているのに、自分は人と関わるのが苦手だと感じる心理」について解説していきます。
なにか参考になれば幸いです。
人と関わるのが苦手だと感じる心理
客観的にみると人とうまく関われているのに、人と関わるのが苦手だと感じる。
これは、人と関わるとき無意識に「自分の意思よりも、相手(周り)にとって最適な自分であること」を優先している状態だと考えられます。
つまり、なにかしらの事情で、自分の気持ちを優先しづらくなっている心理状態だといえるんですよね。
こういうと、
「でも自分の気持ちを優先しすぎるってよくないですよね…」
「私って、素にもどったらすごくわがままなんです…」
みたいなお声も聞こえてきそうな気がします。
自分の気持ちを優先したら、何かものすごく悪いような気がするという感覚ですよね。
でもね、基本的に、自分の気持ちって最大限優先していいし、わがままって全然悪いことじゃないと思うんです。
大切なのは順番で、
自分の気持ちを大切にしているからこそ、わがままを許しているからこそ、自然と他人の気持ちも大切にしたいなっていう気持ちになれたり、相手のわがままも気にならなくなったりするんです。
要は、自分の気持ちを大切にするというステップを飛ばして、人の気持ちを大切にしようとしていませんか?ということを、考えてみていただきたいんです。
ぜひ気づいていただきたいのが、
他人の気持ちを大切にしたいし、自分がいるコミュニティが平和であってほしいし、みんなに笑っていて欲しいし、役に立ちたい。
こんな、他者を思いやる気持ちや貢献したい気持ちがとても大きいということなんです。
そんな他者への愛情が大きいからこそ、自分の気持ちを差し置いてしまうことがあり、それが苦しさに繋がっていくんですよね。
人と関わるのが苦手だと感じる理由
ではなぜ、「人と関わるのが苦手」だと感じるのでしょうか。
その理由は、人と関わるのが苦手だと思っていないと、自分にとって不都合なことが起こると感じているからなんですよね。
言い換えると、
もし人と関わるのが得意だと思うと、相手やコミュニティに対して何か悪影響を及ぼしてしまう、もしくは自分がこれまで我慢していた気持ちを抑えられなくなるという恐れを感じている可能性があるんです。
例えば、人と関わることが苦手だと感じていることで、こんな行動をするかもしれません。
・相手に不快な思いをさせないように言葉に気をつけよう
・周りが盛り上がっているときには、あまり興味がなくても興味があるフリをしよう
・本当は「違う」と思っても、「そうだね」って言わなきゃ
・自分ばっかり話さないように、理性を保たないと
すると、他人を傷つけることはありませんよね。
周りからは、すごく楽しそうに見えるかもしれません。本当に気が合うよねと言われるかもしれません。一緒にいて楽だと思ってもらえるかもしれません。
そして相手が自分の気持ちに気づかないことにホッとします。
でも、気づいてもらえないことに、すごく悲しくなるのも、事実だと思うんです。
もちろん、そんなことを考えているなんて、周りは分かりません。
結果として、
自分は人とうまく関わることができない、と感じるようになるのですよね。
***
さて、ここまで読んでいただいて、思いませんでしたか?
「じゃあ、自分の気持ちをちゃんと優先して、伝えられるようになればいいのかな」
実は、それこそ落とし穴であり、一番おすすめしたくないことなんです。
「人とうまく関わる」に隠れた勘違い
ここから少し意外な話をするかもしれませんが、大切なところなのでお付き合いいただければと思います。
「オープンマインド」
こんな言葉を聞いたことがありませんか?
ビジネスでも使われることがありますが、簡単にいうと、
ありのままの自分を表現できる、そして、自分とは異なる意見も寛容に認められるマインド
のことを指します。
これって、人と関わることが得意な人がやっていることのように思いませんか?
もちろん、それは間違いではありません。
が、このオープンマインドの精神をもち、かつ人とうまく関われていると自己認識できている人には、とても重要な前提条件があるんです。
それは、「しっかりと自分の感情や意思を守っていること」なんです。
「オープンにすること」と「守ること」
これって、どちらかというと対局にあるように思えますよね。
だから、勘違いしやすいんです。
人とうまく関わるようになるためには、ありのままの自分を表現しなければいけないんだ。
そう思って、本来は守るべき自分のたいせつな感情や意思の部分まで、オープンにしすぎてしまう。
曝け出さないとと、頑張ってしまう。
本当に見えづらいですが、この状態って無防備すぎるんです。
傷ついて当然なんです。
人と関わるときに大切なこと
では、人と関わるときに一番大切なことは何なのでしょうか。
そうです。
自分の感情や意思を大切にする、つまり、
「絶対に誰からも侵略されない自分の真ん中」
を守れる状態になるということなんです。
それさえできていれば、人に対してどれだけオープンになったって問題ありません。
だって、どれだけ自分を他者や環境に合わせたとしても、一番大切な自分自身の輪郭がぼやけることはないんです。
人の意見に合わせても、空気を読んでも、気を使っても、
自分の真ん中が傷つくことはありません。
そして同時に、自分の選択として、他者を思いやることができているため、自己攻撃になることもありません。
あ、もちろん、オープンにならなくったっていいのですけどね。
それは、個人の自由です。
人との関係において、心地よい距離感や関係性、つながり方は、人によって様々であり、すべて尊重されるべきものだと思っています。
自分よりも他者や周りを優先し、人と関わることがある意味器用すぎて疲れる方に、ぜひ伝えたいんです。
どうか、自分を隠している自分が悪いんだ、なんて思わないでください。
それでいいんです。
自分の中心部分は、とことん大切にしてほしいのです。
さいごに
今回は、人と関わるのが苦手だと感じる心理について解説しました。
そもそもなぜ人と関わることが苦手になったのか?というのは、人によって様々なご事情があると思います。
なので、これをすると人とうまく関われるようになるよ!というのはどうしても個別論なってしまうので、カウンセリングなど閉じられた空間でしかお伝えしにくいことにもなるのかなと思っています。
ただ、1つ感じるのは、
人と関わることが苦手だと感じるとき、私たちはどうしても「自分が悪い」と思い込みやすくなります。
自立的な人ほど、どうしたらいいのだろう。自分が変わらなければいけない。
そんな風に悩まれるのではと思います。
でも私は思うんです。
変わらなきゃいけないではなく、ありのままの自分をまずは大切にしてほしい。
なんだかお伝えしたいことはもっとたくさんあるのですが、今回はこの辺で。
このコラムが少しでもお役に立てば幸いです。